ふなちゃんの音楽ジャングル

MAI/『BRISA CON TRES AROMAS』

　2018年のNHK大河ドラマ「西郷(せご)どん」のメインテーマを覚えていますか。あの心打たれる歌声は、奄美大島出身のシンガーで唄者(うたしゃ。奄美群島の伝統的なシマ唄の歌い手、名手をいう)の里アンナでした。その彼女が、アルゼンチンのコンテンポラリー・フォルクローレのパーカショニストでシンガー・ソングライターのマリアナ・バラフと、ペルーのアンデス山脈アヤクーチョ生まれで、今は日本に暮らしながら故郷の先住民の民謡を多彩な形で紹介しているイルマ・オスノの3人で、音楽文化圏の垣根を飛び越えた素晴らしいコラボレーション作品を作り上げました。ユニット名は3人の頭文字をとって“MAI"、アラゴン語で「母」を表すことばなのだとか。そして、タイトルの『BRISA CON TRES AROMAS』の意味は、「3つの芳香をはこぶそよ風」。まさにタイトル通りの出色の出来栄えなんです。
　昨年の12月11日、この「MAI プロジェクト」のコンサートが催され、大好評。マリアナ・バラフはビデオ出演でしたが、3人の才媛による奇跡のようなコラボレーションが実現したのです。アルバムは、コラボ・レコーディング4曲でのブレンド感の新鮮さに酔いしれ、それぞれの伝統と現代性の見事なつづれ織り感に思わずうれしくなってしまう。スペイン語、アヤクーチョ語、奄美ことばの歌詞が分け隔てなく心地いいんだなぁ……。そして、最後を飾るのは、青年の男性としては初めて「奄美民謡大賞」を受賞した前山真吾と里アンナのデュオ。みなさんにもぜひ、この素敵な胸騒ぎを感じて欲しいと思います。

船守秀一（音楽プロデューサー・http://www2.odn.ne.jp/obbligato/)