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レモン色の今夜はぽんぽこ祭

桜田 慶子 (柏市 主婦・78歳)

 

「ぽとっ」
「あら、ぽん太くん涙が………泣いているの」
「こんばんは。美しいお顔のお月様。もうすぐたぬき村のぽんぽこ祭、腹太鼓チャンピオン大会なんです。でも僕のお腹見て下さい。ぺっちゃんこ、いい音が出ないんです」
「私の顔がまん丸になる十五夜の日ね」
「皆、笑うんです。ぽん太のお腹はバリバリ煎餅だしって。僕には自慢出来る事が一つも無くて、悲しくなったの」
「じゃ、立派なお腹の持ち主、ごん太くんに聞いてみたらどうかしら」
「ありがとう、ありがとうございます」
「ごん太さん、どうしたらごん太さんのように大きなお腹になれますか? 教えてください」
「おー、ぽん太か。お腹を大きくするのにはハチミツを塗るんだ。お腹を出したままで休むんだよ。次の日デッカイお腹になっているぜ」
 寝床の上のぽん太のお腹は、ハチミツだらけ。心はうれしさいっぱい、久々の笑顔です。
 真夜中、ごん太の手には蜂がたくさん入った袋が。「それっ、ぽん太のお腹を刺しまくれ」と、蜂を放ちました。
 翌日、ぼこぼこに腫れ上がったぽん太のお腹、痛くて痛くてたまりません。でも「ガマン、ガマン」
 ぽんぽこ祭です。
 まん丸お月様が皆の顔をレモン色に照らしたその時、「ぽん、ぽん、ぽこぽん、ぽあーん、ぽあっぱ」なんとも心地いい腹太鼓の音色です。「チャンピオンはぽん太だー」とおおさわぎ。
 お月様は嬉し泣きしているぽん太に、レモン色のシャワーを降りかけてくれました。
 その夜、「おれ様がチャンピオンになるはずだったんだ。チクショー、もっとデカイお腹になってみせるぜ」とお腹にハチミツをどっさりかけて蜂を飛ばそうとした時、ぬーっと黒いかたまりの熊があらわれました。
「ギャー」
 熊から逃げまわって一週間。
ぽん太のおかげで一山も二山も走ったから、もうヘトヘトだ」ごん太が家の扉を開けた時、おいしいごはんの匂い。そしてお風呂から立ち上るあったかい湯気。
「ごん太さん、お帰りなさい」とぽん太の笑顔。
「ぽん太ごめんな、お腹痛かったろう」と言ってごん太はワーワー泣きました。
 お空のお月様
「ぽん太くんは優しいたぬきさん。自慢が見つかったわね。ごん太くんはいいお友達が出来ました」。そしてぽん太とごん太が手を握り合う姿を特別に輝くレモン色の光で包んでくれました。

 

童話作家緒島英二さんより

 ユーモア溢れる中、ぽん太とごん太の友情が心地よく表現されています。自分に自慢できることを見つけ、ぽん太は自信とかけがえのない友達を手にしました。祭の音色の中で。

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