読者投稿オリジナル童話
まにあうるみこと誕生日パーティー
かんだ ゆみ(印西市 パート・48歳)
るみこは走りながらおくれちゃう、おくれちゃう、とつぶやいていました。
本当は急ぐ必要はありませんが、走りながらおくれちゃうって言うのが楽しかったのです。歩いて、少し楽しい気持ちになって走り出し、走っているから急いでいることにするともっと楽しいとるみこは思ったのでした。そうして急いでいるうちに家につきました。
「まにあったあ」
さて、何にまにあったことにしようかな。そうだ。るみこはお友達の誕生日パーティーにまにあったことにしました。
いつも心の中だけで遊んでいるお友達のパーティー。自分の部屋に行くと心の友達が出むかえてくれました。るみこの手には大きなプレゼント。ピンクの箱に赤いリボンがついているプレゼントを持っていることにしたのです。
「お誕生日おめでとう」
心のお友達は大喜び。
「ありがとう、るみこちゃん」
そこまで考えながらるみこは部屋中にぬいぐるみをならべはじめました。ぬいぐるみたちはお誕生日パーティーのお客さんです。
うさぎさんが
「お誕生日おめでとう」
ようせいさんが
「お誕生日おめでとう」
くまさんも
「誕生日おめでとう」
心のお友達は嬉しさでほっぺが赤くなっていました。プレゼントの箱を持ち上げて
「開けてもいい?」と聞きます。るみこがうなずいて
「部屋の真ん中で開けてね」と言いました。
心のお友達は部屋の真ん中へ行ってゆっくりとプレゼントを開けました。プレゼントのふたが開くと中からたくさんの星たちが飛び出してきました。その場にいる人みんなが星を見上げます。昼間なのに星たちはキラキラ部屋の中でたくさん輝いています。
「すてき!ありがとう、るみこちゃん」
心のお友達も、お客さんもるみこも、みんな笑顔でお誕生日の歌を歌います。窓の外は夕焼け。みんなで日が落ちるのを見ました。
すると「るみこちゃん。ご飯ができたわよ」
お母さんが部屋に入ってきました。お客さんたちはぬいぐるみにかえり心のお友達は星を持ってるみこの心の中に帰りました。パーティーは終わったので、るみこはにこにこしながらお母さんの後について行きました。本当にすてきな一日でした。
童話作家緒島英二さんより
るみこさんが心のお友達を大切にして過ごす姿が、よく伝わってきます。心のお友達は、きっともうひとりのるみこさんなんですね。るみこさんの個性がキラリと光りました。