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お化けだって怖い

山田 よしみつ(流山市 無職 86歳)

 

   僕はお化けになった。去年の子供祭りのイベントで一番人気はお化け屋敷。だからと六年二組の担当は全員一致でお化け屋敷に決まった。お化け役のチーフをだれにするかでもめた時、だれかが「敬ちゃんがいい、」と言いだしみんながいっせいに手をたたいて簡単に僕に決まった。
 十日たって子供祭りの当日。暗幕を張り、ついたてで仕切った迷路、カセットの音を流すと、理科室はすっかり不気味なお化け屋敷に変身した。「ドン、」と太鼓が鳴った。開始の合図だ、入り口の辺りでがやがや一年生たちが騒いでいる。だれがはじめに入るかもめているようだ。やがてどかどかと足音がして七、八人がいっしょにきたようだ。目の前にきたので笹の葉をがさがさゆすり「うまそうだな、食っちゃうぞ」と低い声で言う。「どいつから食べようか」お化け仲間も調子を合わせる。近くの子を冷たいゴム手でちっとさわると「きゃあ」「やめて、」「やめろ、」「やめろ」泣き出す女の子もいて、予想以上のパニックになり、泣きながらみんな逃げてかえった。「効果あり、楽しい、楽しい、へっへっ」お化けたちで笑いあった。
 しばらく静かだと思ったら入り口のようすがちがう。
「さあ、みんなお化け退治に行くよ」と一年担任の高子先生の声が聞こえてきた。先生を先頭にぞろぞろとさっきのよわむしどもが元気に歌なんか歌ってやってきた。
「こら、お化け出て来い」、「きたな、へっへっへ」と姿を見せると真っ先に逃げた男の子がいきなりキックをしてきた。
「お化け退治してやる」ほかの子もいっせいに飛び掛かってくる。おもちゃのバットを振り回すやつもいた。「痛い、痛い、やめろ、こら、かみつくな」「やめろ、やめてくれ、まいった、まいった」「もう、そのぐらいで、お化け許してあげようね」先生はすっかり良い子の役。おわびのしるしにとお化けと一年生達との記念撮影までとられてしまった。それから、電気をつけ、明るくしたちっとも怖くないお化け屋敷であんない役までやらされた。
 次の日十号公園でサッカーをして遊んでいると「あっ、お化けの兄ちゃんたちだ」「お化けの兄ちゃんいっしょに遊ぼう」あの時の一年生たちが何人も追いかけてきた。ベンチにすわっていたベビーカーを引いた若いママさんたちがびっくりした顔でぼくたちを見た。「違います。子供祭りで……」説明をするとママたちは顔を見合わせてけらけら笑い出した。そんなことがあってからか僕は公園でちょっと有名人になった。「お化けの兄ちゃん」と言えば僕のこと。そのうちに十号公園にお化けが出るってうわさが広がった。何だか不思議なミステリーが続く。
 一年生も高子先生も、広がるうわさ話もみんな怖い。

 

童話作家緒島英二さんより

 ユーモラスな展開で、子どもたちが喜びそうな作品になりました。お化けという着目が、とても効果的でした。

   

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