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朝日新聞柏支局長のコラム

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消したい壁

 努力が足りないなどの理由でミスをして責められるのは嫌な気分だが、仕方がない。反省して修正して、前に進むことができる。これに対し、努力ではどうにもならない、ありのままの自分を攻撃されると本当につらく、どうしていいかわからなくなる。
 1970年代後半から80年代前半まで暮らした米国でそんな経験をした。米国の人々の多くは親切で、友好的で、正義感が強かった。かつてのように公共の場での人種差別はなくなっていた。それでも、自分とは異なる人種への嫌悪感を示す人もいて、筆者もアジア出身者に対する差別的な言動を露骨に受けたことが何度もある。混乱して黙り込んだり、時には口論になったりした。まだ小中学生。いつも傷ついた。
 米国で黒人男性が白人警官に首を押さえつけられて亡くなり、「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命も大切だ)のスローガンが叫ばれている。黒人男性が背後から警官に7回撃たれた事件も起きた。テニスの大坂なおみ選手は、出場中の大会を一時棄権すると表明して抗議した。
 筆者が米国を離れてから30年以上がたち、さまざまな人種が各分野で活躍し、オバマ大統領が就任した。異なる人種の関係はますますよい方向に進んだのでは。そう願っていたが、いま、対立で死者が出ている。ただ、悲しい。

朝日新聞柏支局長 石原剛文

   

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