ふなちゃんの音楽ジャングル

コーネリアス(Cornelius)/『夢中夢』

　コーネリアスとは、フリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビューした小山田圭吾が、解散後に活動をスタートさせたソロプロジェクトで、映画『猿の惑星』に登場するチンパンジーの考古学者がその名前の由来だと言われます。そんなコーネリアスの6年ぶり、7作目となるオリジナルアルバムがリリースされました。
　開会式の音楽を担当する予定だった東京オリンピックにまつわる騒動や、世界中を襲ったコロナ禍を超えて、昨年あたりから少しずつまた音楽と向き合えるようになったそうで、いわば、本格的な復活アルバムと言えましょう。「変わる消える」や「火花」「環境と心理」のセルフカバー・バージョンも収録されていますが、特筆すべきなのは、作詞家・坂本慎太郎との共作が多かった彼が、シンガーソングライター的に、歌詞も自分で書くことにチャレンジしたといいます。それが、よりパーソナルなアルバムへと繋がったのでしょう。考えてみれば、彼は、2014年に一夜限りのユニットとして結成された高橋幸宏＆METAFIVEのメンバーでしたし、坂本龍一の傑作として評価の高い『out of noise』にギタリストとして参加しています。坂本龍一がレーベル「commmons」を設立したのが54歳でしたが、奇しくも小山田圭吾も54歳。“渋谷系"だともてはやされたのは、もう1990年代の昔のお話だし、清廉潔白なことがアーティストの必須条件でもありません。アンビエント色の強いタイトル曲も素晴らしい、等身大の音楽家をぜひ味わって欲しいと思うのです。

船守秀一（音楽プロデューサー・http://www2.odn.ne.jp/obbligato/)