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オセロ

大友 いっこ(守谷市 相談員 60代)

 

  こうすけは、ゲームで負けるのはたえられない。だって、いつだってカッコいいおにいちゃんじゃなくちゃだめなんだ。スポーツだって、勉強だっていちばんはオレ! それが立花こうすけなんだ。
 今、それがくずされそうになっている。オレが負けるわけはない。だって、この学どうルームではいつだって、何だって、だれにだって負けたことなんてないんだ。まして、六年生のオレが三年生のけんたに負けるはずはないんだ。でも、目の前のオセロばんは、ゼッタイゼツメイのピンチ、オセロの黒は、わずか十こ、白は、三十五こ、ここからばん回できるのか……。頭がかゆい! 体中の血が頭に集合してるみたいだ。やばいやばいやばい!
 そのとき、近くでふざけていたさとしがオセロばんに手をついた。すると、ガチャガチャと音がして、黒と白がグチャグチャになった。
「なにするんだよ!」とこうすけがどなった。「あっ、こうすけごめん! ここは、こうだった?」
さとしは、あせって、オセロの石をならべていた。(あ、あそこさえ黒のままなら……)
「うーん、たぶんそうかな。もう、こっちへこないでよ」こうすけはけんたに背中を向けて、あわててさとしを追いはらった。「わかったよ、本当にごめん!」さとしが行ってしまうと「じゃあ、ここ」こうすけが黒の石をおくと、一度に十まい、白から黒へと変わった。するとけんたが、「わぁ、やられた。うーん、じゃあ、ここ」だけど、 けんたのおいた石は、またこうすけの次の手で、白から黒へと六まいが変わった。「もう、おくところがない。パスだよ」すると、こうすけは、次から次へと白を黒に変えていく。勝ちが見えてきたこうすけだが、わくわくしていない。それでもけんたは、ニコニコしている。
 後一手で終わりっていうとき、こうすけは、「なぁ、お前の負けだけど、くやしくない?」と、けんたに聞いてみた。
「うん、くやしくないよ。だって、こうすけくんが相手になってくれて、すごいうれしいもん。オセロっておもしろいね」こうすけは、さとしが間ちがっておいた黒い石をちょっとこうかいした。そして、最後の一まいは、自分のじんちにもどした。
「けんた、もう一回やろう」と言うとけんたも「うん」と答えて、また、石をならべ始めた。

 

童話作家緒島英二さんより

 こうすけの心の移ろいが、とても深く感じられました。仲間の大切さが読みとれます。「こうすけ」と「オレ」の表記分けを。

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