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ばあちゃんのハッピータイム

菅原 当栄 (鎌ケ谷市 主婦・71歳)

 

 「チュンチュンチュンばあちゃんおはよーチュンチュン」小とりのさえずりで目がさめたばあちゃんはとても元気な75さいのばあちゃんです。毎日、自てん車にのってかいものに行ったりとおくの公えんに行ったり友だちに会いに行ったりしていそがしくしてます。そして夜になりおふろに入りながら「さあーきょうはどんな事を思い出してねようかしら」とひとりごとを言います、そうです、それがばあちゃんのハッピータイムなのです。その思い出とは今では高校生になったまごがまだ小さい頃ばあちゃんといっしょにあそんだりおでかけしたむかしの事です。その思い出をまぶたにうかべねむりにつく時間がばあちゃんは大すきなのです。
 きのうのハッピータイムの思い出は、ある年のお正月神社へおまいりに行った時のお話です。まごのナナちゃんが7さい、カズくんが5さいの頃の思い出、ふたりはおさいせんをポケットに入ればあちゃんといっしょにならんでいます。カズくんがばあちゃんに言っています。「ぼく、だいくさんになれますようにっておねがいするんだ。でもやねからおちたらこわいなーってママに言ったらママはおやかたのちゅういをちゃんときいてやればおちないよって言ってたよ」ばあちゃんは「そうだね、ママの言うとおりだよ」って言ってます。ナナちゃんは「カズくん、私のおうちをつくってね。大きな公えんにあるおしろのようなおうちがいいわ」って言ってます。「うん、ぼくつくるよ」「カズくんならきっとつくれるよ。いい子いい子」って言いながらナナちゃんは両手でカズくんのあたまをぐしゃぐしゃとしたり、ほっぺをなでなでしたりしてます。
 そんなまごとばあちゃんの話をまわりの人たちはやさしそうにニコニコしながらきいています。そうしてむかしのことを思いうかべている間にばあちゃんはねむりはじめ、ゆめの中で高校生のまごたちと楽しそうにお話したりわらったりしています。そして次の朝ことりのさえずりで元気に目ざめるのです。
 ばあちゃんは毎日のハッピータイムが楽しみでウキウキしているのですが、そんな事をしらない人から「ひとりぐらしでさみしいでしょ」ってなぐさめられます。ばあちゃんは「へいきですよ。心の中のひきだしに思い出がいっぱいあるからだいじょうぶ、さみしくないですよ。ありがとう」ってこたえ毎日自てん車ではしりまわっています。「思い出ってなんてステキなんでしょう。このしあわせはむかしの時間がビューってとんで来るのね」って心の中で思っています。
 さて今日のハッピータイムはどんな思い出にしようかしら。いっぱいあってうれしいわ……。

 

童話作家緒島英二さんより

 よき思い出とは、どう生きたかという充実感なのかもしれませんね。ばあちゃんに負けないハッピータイムを、積み重ねたいですね。

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