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おばあちゃんはマジシャン

坂井貴美子 (松戸市 主婦・80歳)

 

 今日は町内のお祭り日。おばあちゃんのマジックを町内の皆さんにお見せする日でもある。
「何年ぶりのお祭りかしら、お天気でよかったわ。」
 お母さんは、真っ青な空を見上げてつぶやいた。
 遠くからお囃子の音も聞こえてくる。
「お母さん、そろそろおばあちゃんのマジックが始まる時間だよ。早く集会場へ行こうよ。」
 おばあちゃんは5年程前からマジッククラブに入り、週1回出かけている。帰ってくると教わったマジックをぼくの前でやってみせる。どんどん上手になり、今年はマジッククラブの方々と発表するのだ。
 会場は人でいっぱい。ぼくとお母さんは前の席についた。電気が消え、舞台だけが明るくなり、音楽がかかると花かざりの帽子姿のおばあちゃんがすまして出てきた。
「みなさん! ようこそ、これからマジックを始めます。ゆっくりごらん下さい! 」パチパチパチ。ぼくは力いっぱい手をたたいた。
「これはどこにでもある紙です。これにハサミを入れます。」チョキチョキチョキ。大きくステッキをふり「マジックパワー! 」と声をかけると、あらら! もとの一枚の紙になっている。ふしぎ。
「ここに何でもないおさいふがあります。白い紙が二枚入っています。」大きくステッキをふり「マジックパワー! 」あらら! 一万円札と千円札に変わりました、ふしぎなサイフです。
 すごい! お家でやっていたよりうまくやっているよ。
「ここに一本のひもがあります。ハサミを入れます。」チョキチョキチョキ。大きくステッキをふり「マジックパワー」あらら! 一本のひもにもどりました。
 おばあちゃんのマジックは大成功!
「お母さん、よかったね。おばあちゃんどんどん上手になって、ぼくの35点テスト、マジックパワーで100点にしてくれないかな。」
「なに言っているの、さあ、お家に帰って宿題よ。」
 ぼくは、おばあちゃんがいつまでも元気でマジックをずっと続けて欲しいと心から思った。ぼく大きくなったらマジシャンになろうかな。

 

童話作家緒島英二さんより

 おばあちゃんのマジックパワーは、夢と希望を未来へと繋げていく力なのでしょう。

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