朝日新聞柏支局長のコラム
春場所は
「ぁぁーっ」。1月にあった大相撲初場所千秋楽の結びの一番で、柏市出身の琴勝峰が相星決戦で敗れると、応援会に集まった市長や後援会関係者らは、一斉に小さく声を上げ、のけぞり、同じ角度で天を仰いだ。あれっ、どこかで見たことがある風景だな。
昨年5月の大相撲夏場所の千秋楽。初優勝を目指した隆の勝=柏市出身=が敗れると、中継を見守った市長ら応援会の参加者は同様に声を上げ、のけぞり、天を仰いだ。そして、健闘をたたえた。「また、やってくれるよ」。誰も彼もが負けてもうれしそうだった。
柏で基礎を学んだ関取が、1年に2度も優勝争いをする。偶然ではない。ほかにも柏育ちの関取が番付に複数、名を連ねる。少年団監督らの指導力と、土俵と力士を支える応援組織「柏力会」の後押しが、この結果を生んだのだろう。
私は、北海道出身の50代。北の湖や千代の富士らを見て育った。風雪に耐えたハングリー精神が強さの源かのように言われ、誇りに思った。だが角界に今、道産子の勢いはない。
東葛地域は、冬は快晴の空が広がり、東京に直結する。稽古の時間と相手に恵まれていそう。柏の力士の優勝や横綱誕生があるのではないか。そんな期待を寄せながら、春場所を見ている。
朝日新聞柏支局長 斎藤茂洋